最高裁判所第三小法廷 昭和25(れ)1464 判決
主 文
本件各上告を棄却する。
理 由
被告人Aの弁護人鍛治利一、被告人Bの弁護人井上守三の上告趣意は、末尾に添
えた書面記載のとおりである。
弁護人鍛治利一の上告趣意第一、二点について。
原判決挙示の証拠を綜合すれば所論痴情の点を認められるのであつて、その認定
に採証上の違法はない。直接証拠がない場合に間接証拠によつて犯罪事実を認定し
たからといつて直ちに虚無の証拠によつて断罪したものと言うことはできない。ま
た、原判決挙示の証拠は、所論のように一貫した供述の一部を分離変更して引用し
たものでもない。所論は、要するに原審と異つた見地から証拠を解釈して、原審に
委ねられている証拠の取捨判断を非難するものであるから採用することができない。
なお、論旨中には憲法の規定に違反するとの語句もあるが、所論はすべて証拠に関
する刑訴法上の問題であつで憲法上の問題ではない。
同第三点について。
憲法三八条三項の自白中に公判廷の自白を含まないことについての当裁判所の判
例は、新刑訴法の制定された今日においても何ら変更の必要を見ないのであつて、
新刑訴法三一九条は憲法三八条の解釈規定ではなく、憲法の根本精神を更に拡充し
たものであり、右判例の見解は少しも刑訴法の規定と矛盾しないことは、当裁判所
の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第二〇六三号昭和二四年一二月二
一日大法廷判決)。それゆえ、論旨は理由がない。
弁護人井上守三の上告趣意について。
所論は、原審の量刑不当を主張するものであるが、このような主張は、上告の適
法な理由ではないから、採用することができない。
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よつて、本件上告はいずれも理由ないものと認め、旧刑訴四四六条に従い主文の
とおり判決する。
以上は、公判廷の自白に関し裁判官井上登に反対意見ある外、全裁判官の一致し
た意見によるものであつて、裁判官井上登の反対意見は昭和二三年(れ)第一六八
号昭和二三年七月二九日大法廷判決記載のとおりである。
検察官 長部謹吾関与
昭和二六年二月一三日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎
裁判官 弁 上 登
裁判官 島 保
裁判官 河 村 又 介
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